日本を代表する染色家・アーティスト柚木沙弥郎氏が描きおろした原画から、ピカソやマティスなども作品を制作した、歴史ある工房Idem Paris(イデム・パリ)にてリトグラフを制作しました。
全ての作品にエディションナンバーがつく、数量限定販売です。
日本を代表する染色家、柚木沙弥郎氏。柳宗悦氏が提唱する「民藝」との出会いを機に、染色家の芹沢_介氏に師事。鮮やかな赤や藍色、柔らかな緑や水色、豊かな色彩で仕上げられた作品はどれも伸びやかで活力に溢れています。創作活動は染色に留まらず、リトグラフや銅版画、ガラス絵、絵本など多岐にわたり、人々を魅了しています。
イデーは、Webマガジン『LIFECYCLING』での取材をきっかけに柚木氏と親交を深め、2014年には「布と暮らす」をテーマに展示会を開催しました。新作タペストリーを中心とした布作品をイデーの家具と合わせ、インテリアを彩るアイテムとして新たなアプローチで紹介。この展示会は、それまで美術館や民藝館、画廊などで作品を展示してきた柚木氏にとって、インテリアに作品を取り入れることで空間が豊かになり、見る人に作品をより身近に感じてもらえるという発見でもありました。
今回は「日常のインテリア空間の中で楽しむアート」というイデーからのオーダーに対して興味と賛同をいただき、新作リトグラフのために、鳥や人をモチーフとしたものや幾何学的なデザインなど、大小7種類の作品を描いていただきました。
その原画を手に、訪ねたパリの伝説的リトグラフ工房Idem Paris。ピカソやマティス、シャガールといった芸術家の名作を生み出し、1世紀に渡ってパリの伝統を引き継ぐ彼らもまた、伝統に安寧することなく常に進化しつづけ、現在もさまざまなアーティストの作品を制作しています。当時から変わらず動きつづける鋳鉄の印刷機、職人の感性による色の調合、マニュアルなく印刷機を扱う職人の腕と勘。全てがこの工房でしか生み出せない味わいになります。柚木氏より一任されたイデーのアートディレクターが職人と数日にわたり打ち合わせし、インクの色を調整、刷り上がりの詳細チェックを重ね、オリジナルのリトグラフが完成しました。
瑞々しい感性で創り上げる柚木氏の図案と進化をつづけるIdem Paris。唯一無二のコラボレーションで生まれたリトグラフは、生活空間を豊かに彩り、日常に歓びと楽しさを届けてくれることでしょう。
リトグラフとの出会い、イデーとともにIdem Paris(以下Idem)で制作したリトグラフについて、アートについて日頃から考えていることなど、柚木沙弥郎さんにお話を伺いました。
柚木さんが初めてリトグラフに接したのは1988年。東京でリトグラフ工房「アトリエMMG」(1974-2007年)を主宰していた益田祐作氏との出会いから始まった。Idemの前身ムルロ工房の技術援助を受けていたというMMGは、機械も技術もフランス仕込み。
「僕は益田さんの好意でずいぶん長い間プリントをさせていただいたんです」と語る柚木さん。ゆえにムルロ時代の理念と情熱を受け継ぐIdemで作品を作ることに“ご縁”を感じたという。
「この仕事がいかに面白いかということを身に沁みて感じている。作家と職人との共同制作こそ、リトグラフの醍醐味なんです」
Idemでのリトグラフ制作において、最終的な色を決めるのは職人の経験と勘が重要になってくる。
原画を基に、インクを調合し、一色ずつ決めていく。例えば最初が青色だとしたら、その青が決まるまで何度も試し刷りをし、希望の色になったら青で描かれた部分だけを刷る。その途中も、職人は常に原画と照らし合わせながら、色の明度や濃淡を確認。一色が刷り終わると次の色、という具合に工程を重ねていく。時には数日をかけて一つの作品を手がける。色が少しずつ重なりあって、徐々に作品としての姿が現れてくる。
一台の印刷機を動かすのは4人がかり。原画を描くのは作家だが、職人の手が加わってまた違った作品になるというのがリトグラフの面白さであり、柚木さんのいう「共同作業」という考え方だ。
「日本ではリトグラフというのは、原画のコピーだと思われている。格下のように考えられがちですけれども、僕はそうじゃないと思うんです。量を作り、個人の作家の表現力や思いがオープンになって、初めて公的な存在になる。そこにリトグラフの意味がある」
一枚一枚が原画と同じような価値ある作品となると、より多くの人に楽しんでもらえるというのも特長のひとつ。日常にアートを取り入れ、毎日の暮らしを豊かにすることは、柚木さんが常日頃から考えていることでもある。
「僕はアートというものはまず人生を肯定することだと思っています。それは具体的に何かを作っているわけではなくても、どんな人にも当てはまること。自分を肯定して、何か一つでも面白いと思うことやものを見つける。それを積み重ねていけば、楽しい人生ができるんじゃないかと思うから。人から教わるのではなくて、自分で発見するということですね」
それには、「一人になる」ことが重要だとも。
「現代は、みんながつながっていないと不安でしょうがない。そういう気持ちを持っていると思うんです。だけど、時に一人になること。誰かとつながっていなくても良いという超越した気持ちが持てるか。例えば旅行には大勢で行かず、一人で行って、いろんなものを見る。自分の目で見て、経験することですね」
客観的に自分を見つめる時間を持ち、発見すること。生活を楽しくするには自発的に動かなければならない。
「僕は、Idemの印刷現場に行けなかったからとても残念に思っています。行っていたら、きっと嬉しくて踊り出したくなるくらいの感激だったと思うから。そういうことを経験して、実感すること。それこそが暮らしを豊かにすることにつながると思うんです」
使用する色ごとに版をつくり、薄い色から刷っていきます。こちらは「4つのパン」の1版目。
1枚ずつ紙をセットし、送っていく作業。少しのずれも許されません。
力強い黒と青が印象的な作品「4つのパン」。こちらは手漉き和紙を使っています。
柚木氏が水彩で描いた原画と見比べながら、刷り上がりをチェックしていきます。
「小鳥」や「ピープル」は柚木氏の作品に多く登場するモチーフ。鮮やかで可愛らしく、どこかユーモアのある表情が魅力的です。
1点ずつ、idem工房の刻印が押されています。
全ての作品にエディションナンバーがついた、数量限定販売。
※サイズは全て額装込み
※2016年作品は完売いたしました
「4つのパン」
Edition 50
サイズ:W705×H1005×D54(mm)
仕様:手漉き和紙(耳付き)
「小鳥」
Edition 100
サイズ:W922×H330×D35(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
「ピープル」
Edition 100
サイズ:W922×H330×D35(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
「カタチ」
Edition 120
サイズ:W413×H543×D31(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
「ティータイム」
Edition 120
サイズ:W413×H543×D31(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
「少女」
Edition 120
サイズ:W413×H543×D31(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
「少年」
Edition 120
サイズ:W413×H543×D31(mm)
仕様:フランス紙 Papiers ARCHES
染色家。1922年東京生まれ。1942年、東京帝国大学文学部美学・美術史科に入学するが、翌年学徒動員。終戦後、1946年に岡山県倉敷市にある大原美術館に勤務。柳宗悦が提唱する「民藝」との出会いを機に、芹沢_介に弟子入りし染色の道を志す。1955年、銀座のたくみ工芸店画廊にて初個展。以降50年以上にわたり制作を続け、数多くの作品を発表する。1972年、女子美術大学の教授に就任、1987年に学長に就任(91年退職)。2008年から3年連続で、パリのGALERIE L'EUROPEで個展を開催し、高い評価を得る。2013年には世田谷美術館で開催した「いのちの旗じるし」が好評を博す。2014年フランス国立ギメ東洋美術館に作品80点が収蔵。同館にて個展「La danse des forms − Textile de SamiroYunoki」も開催。
インタビュー記事『美意識とユーモアが暮らしを彩る、染色家の住まい』(interview&photo『LIFECYCLING』)
2014.3.20 - 4.21
イデーショップ 日本橋店
2014.3.20 - 4.21
イデーショップ 日本橋店
2014.10.4 - 2015.4.19
岩手県立美術館
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.4 - 2015.4.19
岩手県立美術館
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.4 - 2015.4.19
岩手県立美術館
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.4 - 2015.4.19
岩手県立美術館
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.8 - 2015.1.12
ギメ美術館(パリ)
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.8 - 2015.1.12
ギメ美術館(パリ)
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.8 - 2015.1.12
ギメ美術館(パリ)
写真協力:http://www.samiro.net/
2014.10.8 - 2015.1.12
ギメ美術館(パリ)
写真協力:http://www.samiro.net/