手つかずの自然と、温暖で過ごしやすい気候、豊かな食にも恵まれている、南仏プロヴァンス地方。古くから北アフリカ系移民を多く受け入れてきた背景から、さまざまな異文化、多彩な食文化が溢れています。その中心都市マルセイユには近年、首都パリや周辺都市から移住する才能溢れた若きアーティストの存在と、土地に根付いている職人技や伝統技術に敬意を示したものづくりが改めて注目されています。
マルセイユのクラフトマンシップを大切にしたものづくりを発信している2ブランドと、イデーバイヤーが買い付け、セレクトした初夏に取り入れやすいテーブルウェアやリネンアイテムをご紹介します。
オンライン取り扱い商品を見るPhoto - memòri ©Julien Oppenheim. / Œuvres Sensibles (cover right + portrait) ©Max Verret. / Œuvres Sensibles (cover left) ©Sabrina-Hadjhacene.
20世紀中期、ベッドカバーやカーテンとしてプロヴァンス地方で製作されたテキスタイルをリメイクして作られたウェア。現地の技法や伝統的な色柄、もともとの素材を活かした贅沢な逸品です。
マルセイユを拠点に活動するアーティスト Alicia Gautier と、Guillaume Thiebaut のデュオによるアパレルを中心としたスタジオ。2020年より活動を開始。地中海沿岸をルーツにした手工芸と伝統技術の記憶の再燃を活動の主とし、現在はプロヴァンス地方で織られたアンティークテキスタイルを使用し、マルセイユ近隣のいくつかの小さなアトリエと協業しながらファッションウェアの製作を中心に活動。
フランス製の綿麻地に、手やテーブルウェアなど身の回りのものをモチーフにしたアートワークを刺繍したインテリアテキスタイル。19世紀から使われている手ハンドルの機械や手刺繍で丁寧に作られています。
フランスのアルル生まれのアーティスト兼デザイナー、Sarah Espeute が手がけるインテリアテキスタイルブランド。パリで彼女自身が立ち上げた出版社を経て、現在はマルセイユに活動の拠点を移し、フランスの丈夫なアンティークリネンに19世紀から使われている手ハンドルによる機械とハンドメイドによる刺繍を施した、生活に寄り添うテキスタイル作品を中心に製作。2023年よりマルセイユにブティック&ショールームスペース ”SENSIBLE” をオープン。
南仏プロヴァンスでは、古くから北アフリカ系移民を多く受け入れてきた背景から、さまざまな異文化に溢れ、それらを上手く組み合わせて暮らしを彩っています。
マルセイユ周辺でイデーバイヤーが買い付けたりセレクトしたプロダクトを中心に、初夏に取り入れやすいテーブルウェアやリネンアイテムをご紹介します。
天然の草木を使用したナチュラルな風合いが美しいファッションアイテムやテーブルウェアを初夏のコーディネートにプラス。
モロッコで日常的に親しまれているミントティー用のグラス。ハンドクラフトでリサイクルガラスから作ったグラスが、食卓にさわやかさをもたらします。
南仏にあるリゾート地の青い海や美しい浜辺、澄んだ空をモチーフに、この企画のためにデザインしたオリジナルのリネンシリーズです。
刻々と変化する地中海のそよ風を浴びるマルセイユは、長い間軽視されてきたが、待望のルネッサンスを迎えている。その狭く入り組んだ通りは、波乱に満ちた過去の証人として佇み、南の光に照らされ、まるで小説から抜け出してきたかのようだ。かつて古代ギリシアの港であり、文明間の交流の発祥地であったマルセイユは、今では文化が出会い、混ざり合う国際的な大都市である。
新世代のアーティストやデザイナーがこの街を本拠地とし、ヨーロッパの新しいクリエイティブ・ハブのひとつとなっているのは偶然ではない。労働者階級の町は新しいスペースを歓迎し、永久に変化しつづける社会を反映している。修道院はアーティストレジデンスに、古い工場はコミュニティスペースに、荒れ地はシェアガーデンへと姿を変えている。
マルセイユでは、変化は唯一の不変であり、パリ人に対する不信感も不変である。この多面的な町のDNAには、そこに住む人びとと同じように、美と混沌、そして何よりも海が刻み込まれている。海は、その反射光で街を彩り、住民の肌に塩を塗り、この街を特徴づける新鮮な空気、つまり再生という空気を絶えず運んでくる。
ジェレミー・ベンケムン
TRANSIT編集部
Marseille, bathed in the ever-changing breeze of the Mediterranean Sea, is undergoing a long-awaited renaissance after having been unfairly neglected for a while. Its narrow, tangled streets, standing as witnesses of its past, blessed with the warm southern light, seem straight out of a novel. Once a Phocaean port and cradle of exchanges between civilizations, Marseilles is now a multicultural metropolis where influences from all over the Mediterranean Sea meet and mingle.
It's no coincidence that a whole new generation of artists and designers have made the city their home, making it one of Europe's new creative hubs. Working-class neighborhoods are welcoming new spaces, reflecting a society in perpetual mutation. Convents are transformed into artists residencies, old factories into community spaces, wastelands into shared gardens.
In Marseille, change is the only constant, as is the distrust of Parisians, often mocked by locals over a Pastis. Deep in the DNA of this city of a thousand faces lies beauty, chaos, but above all the sea, which colors the city with its reflections, which pours salt on the skin of its inhabitans, and which constantly brings them the fresh air that defines the city, one of renewal.
Jeremy Benkemoun
TRANSIT Editorial department