Scandinavian Craftsmen

Crafted Modern - Artist Interview -

Laura Itkonenラウラ・イトコネンCeramic artist, Finland

2016年よりセラミックアーティストとして活動するラウラ・イトコネン。アートとデザインの狭間を行き来しながら、アーティスティックな色の配色と、彫刻的で建築的なアプローチで作られた作品が生み出されるフィンランドのヘルシンキのスタジオに伺い話を聞いた。

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スタジオはかなり整理整頓されていますね。

ヘルシンキは家賃が高いので、小さいスタジオですがここで作品を作っています。狭いので整頓しておかないといけないんです。作品は型を使っての制作がメインです。ユニークなものを作る時はろくろはいいけれども、同じものをいくつか作るときは非常に難しいので。でもテクニックはいろいろと混ぜたりしていますね。

どのような経緯でアーティストを目指したのですか?

子どものころは自分に芸術的な才能があるかわからなかったのですが、中学生の時のアートの先生に「とても良いものを作るので、もっとやってみたらどうか」と背中を押してもらいました。当時は違う道に進もうと思ってたんです。人と関わるのが好きで、なんとなく福祉系で仕事をするのが良いと思っていました。でも先生が応援してくれたので、高校に入ってからもたくさんアートの授業をとりました。
写真の授業があって、暗室で写真をプリントするのに惹かれましたね。その時はフォトグラファーになろうと思ったくらい。それで高校の後少し写真を勉強しましたが、暗室でできた作品よりも暗室での作業自体、つまり作るプロセスの方が好きだと気付きました。だから何か作る方が向いていると思ったんです。そして何を考えたか突然陶芸を学び出したんです。陶芸の素材は昔から馴染みがあって、だんだんそちらの道に向かっていきました。

高校はアートスクールですか?

いえ、普通の高校に通っていました。でもたくさんアートのコースがありました。リーヒマキという街の出身なんですが、ミュージアムやシアターがあったり、当時アートに力を入れていて、文化的に豊かな街でした。街がある種の良い影響を与えてくれたのかもしれません。

フィンランドではアートは身近に楽しまれていますか?アートを日常に取り入れることについて何かアドバイスありますか?

最近はアートを楽しむ人が増えてきていると思います。ソーシャルメディアの影響も大きいと思います。他の人が何をやっているのか見えるし、とてもポジティブなエネルギーが流れていると思います。カジュアルになったというか。フィンランドでも元々アートはギャラリーで買うものという意識があって。未知の世界という感じで足を踏み入れにくいものだったかもしれません。でもアートはすごく高価なものだけでなく、手軽に楽しめるものもあります。最近はアートを買うことがトレンドになってきていると感じますね。

トレンドになってきているというのは、アートのような1点ものを手に入れるのが、大量生産されたものと比べてということですか?

そうですね。アートを買うことが、今までとは違う特別な消費になっているということです。もちろん少しは高くなってしまうと思いますが、エコロジカルでもあると思います。

日々の暮らしについてお聞きしますが、仕事と余暇のバランスをどうとっていますか?

それに関しては、まだ学んでいる最中です。働き過ぎている時もあります。それだけ情熱があるということですが、スタジオに身を置くのは好きなことですから。
でも私は自然派なんです。夏はカヌーをしたりキノコを摘みに行ったりするのが好きで、とてもリラックスできます。冬はあまり好きではないけれど。
学生時代を過ごしたフォーシャに家族から引き継いだサマーハウスもあって、夫とリノベーションをしたところ。ヘルシンキとはまた別のベーシックなライフスタイルを送れます。この地域の自然や風景はとても美しく、多くの国立公園があります。水道も通っていませんが、母方の親戚が1500年代くらいから代々その土地に住んでいてルーツを感じています。制作に使う赤土もこの近くのエリアから採れたものです。

フィンランドは幸せな国として有名ですが、秘訣は何でしょうか。

何が本当に必要なのかということを、見つめることなのだと思います。
人はあれこれ欲しがったりしますが、私は今あることで十分に幸せと感じていて、それ以上に良いことがあってもおまけなんだと思っています。サマーハウスでの時間もとても大事ですね。スローライフですし、セラミックを作るのもスローライフです。それで生計を立てているので大変なこともありますが、バランスをとりながらやっています。自分の内の中で満足することが大事なのではないでしょうか。

日本では他人の評価に自分が揺らいでしまうことが多いと思います。自分の内なる幸せってどうすれば感じられるのでしょう?

生きるために自分が本当に好きなことをしていて、それが誇らしくとても喜びを与えてくれます。私のやり方で前進しているんです。成功って何でしょう。少なくとも私は自分が達成したことと、今していることについて満足していて自由も感じています。
作品作りにおいては、他人のジャッジを受けている気分になることもありますよ。

そういう風に思うこともあるんですね。

でも自分の作るものに満足しています。自分の好きなことをやっていて、その自信がすごくあるんです。作品を作って外部に発表することはポジティブなことで、続けていくエネルギーを与えてくれるもの。話をしてフィードバックをもらえることもありがたいです。作品はもらったフィードバックを映しつつ、自分の心の声も聞いて出てきたもの。そうして内なる幸せのバランスを保っているんだと思います。

自信は自分の経験からきているんですか?

自分の道やスタイルがすぐに見つかったわけではなくて、2010年にアアルト大学を卒業した頃はあまりわかっていなかったです。ティオというブランドのファッションの会社でビジュアルデザイナーとして働き、2015年に自分のビジネスを始めようと思いました。グラフィックデザインも考えてみたけれど、私は陶芸家というバックグラウンドがあったことに気づいて、2016年にスタジオを作って。そこからパズルがはまっていくようにカチッとしました。いろいろな道を経て、学校も出て陶芸を離れたことでまた違う考え方ができるようになりました。そういったいろいろな経験が自信につながっているのかもしれません。

ご自宅にもアートを飾っていますか?家にお気に入りのアートがあるとどんな気分ですか。

自分の作品はたくさんはないですね。他はすべて知り合いのアーティストのものです。それってとても素敵なことだと思うんです。アートを持っていれば彼らのことを思い出せるし。家にアートを迎えるとき、何を選ぶかはパーソナルな判断ですよね。家に深みを与えてくれて「あなたが誰なのか」を語ってくれると思います。どうしてそれを選んだのかということも含めて、家がその人らしくなるんじゃないかな。直感、一目惚れじゃないけれども、見たときに「わーっ」と思うものを選ぶのがいいのではないでしょうか。

この作品を見て幸せを感じました。カラーだったり形だったり、見るたび触れるたびに幸せになりそうです。

アートピースを買うことの良い点として、自分のものになったら手に触れることができるというのがあります。私は作品の表面をいろいろなテクスチャーにしていて、質感や感触を考えて仕上げもしっかりしているので、ぜひ触って感じてほしいです。

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Laura Itkonenラウラ・イトコネン

ヘルシンキを拠点に活動するアーティスト・デザイナー。リーヒマキ出身。アアルト大学にて芸術・デザイン・セラミック・ガラスについて学び、その後応用美術とデザインの修士号を習得。卒業後はファッションブランドのビジュアルデザインに5年間携わった後、2016年から自身のスタジオを運営。「Marquis」「Wall Sculpture」「Sculptural」などの彫刻的・建築的なセラミックアート作品を制作する。
彼女の作品は、ミラノやロンドンなどの国際展示会やフェアで紹介される他、フィンランドのデザインイベントHabitareにて4人の新進気鋭の最も注目すべきアーティストに選ばれている(2019年)。またフィンランド文化財団による一年間の助成を受け、現在は2024年に完成予定の病院の壁面に飾られるアートプロジェクトに取り組んでいる。

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