photo by Norio Kidera
日本を代表する染色家、アーティストである柚木沙弥郎氏。
これまでイデーとさまざまなものづくりをしてきました。
パリで一緒につくったリトグラフや、イデーのために描きおろした原画から生まれたさまざまなオリジナルアイテム。
「アートを通して、これからの暮らしを良くしていくこと」という想いのもと、ともに手掛けてきた取り組みをご紹介します。
柚木沙弥郎 作品ラインナップ日本を代表する染色家・柚木沙弥郎氏は、柳宗悦氏が提唱する「民藝」との出会いを機に染色家の芹沢_介氏に師事しました。鮮やかな赤や藍色、柔らかな緑や水色、豊かな色彩で仕上げられた作品はどれも伸びやかで活力に溢れています。
イデーはWebマガジン "LIFECYCLING" での取材をきっかけに柚木氏と親交を深めました。
2014年3月にイデーショップで初の布作品の個展「布と暮らす」を開催しました。新作タペストリーを中心とした布作品をイデーの家具と合わせ、インテリアを彩るアイテムとして新たなアプローチで紹介。それまで美術館や民藝館、画廊などで作品を展示してきた柚木氏にとって、この展示会はインテリアに作品を取り入れることで空間が豊かになり、見る人に作品をより身近に感じてもらえる、という発見でもありました。
2020年9月には IDÉE TOKYO で個展 "FOLKARTIST" を開催。
ペンチやトンカチ、ティーポットといった日常の道具をかたどったデザインのほか、抽象的でいきいきとした命の気配を感じさせる表現の作品をご紹介しました。
世界中がパンデミックで混乱するさなかでの展示会に際し、柚木氏はインタビューでこう語りました。
「個人個人が立ち止まって、元々の自分に立ち返って考えるいいチャンスではないかと思うんです。この機会に手紙を書く人がいたり、語学のスキルをあげたり。中には住まいに目を向ける人もいると思います。住まいはその人の居心地のいい、気持ちのいい場所であってほしい。」
柚木氏が紡ぐ言葉のひとつひとつは、今の私たちの心をとらえて離しません。
柚木氏のインタビュー動画もどうぞご覧ください。
Interview with Samiro Yunoki
@Exhibition “FOLKARTIST” IDÉE TOKYO (4:24)
2016年には、パリの伝説的リトグラフ工房 Idem Paris で刷ったオリジナルのリトグラフを制作しました。
イデーの「日常のインテリア空間の中で楽しむアート」というオーダーで柚木氏が描いた、鳥や人をモチーフにしたものなど大小7種類の作品。その原画を手に、イデーのアートディレクターが Idem Paris の職人と打ち合わせし、インクの色を調整、刷り上がりの詳細チェックを重ね、オリジナルのリトグラフが完成しました。
2019年には柚木氏自身が Idem Paris を訪れ、2回目となるオリジナルのリトグラフ制作が実現しました。
マティスやピカソをはじめ、世界の芸術家の版画を扱ってきたアトリエのなかを巡り、ときには足を止めて熟練の職人らの働きぶりを食い入るように見つめる柚木氏の表情が印象的でした。
柚木氏が100歳を迎えた2022年には、3回目となるオリジナルリトグラフが完成しました。
柚木氏が描いた原画をもとに Idem Paris の熟練の職人が手作業で仕上げた作品は、色の重なり方やテクスチャーなどリトグラフならではの魅力がつまっています。
さらに取り組みはひろがり、より多くの方々に日々の生活を楽しんでもらうことをコンセプトに、手ぬぐいや浴衣などのプロダクトも手掛けてきました。柚木氏とのものづくりは常にこれからの暮らしについて考えることからスタートし、現代のライフスタイルにも馴染み、モダンでありながら楽しく、使うほどに愛着が増す、生活に寄り添うものづくりを目指しました。
柚木氏がイデーのために描き下ろした図案で作った手ぬぐい。手ぬぐい以外にもテーブルランナーやキッチンクロス、タペストリーなどさまざまなシーンで使ってほしいという思いから“Daily Cloth”と名付けました。職人が「注染」という技法で染めており、同じ柄でも微妙に異なる風合いが愉しめます。
商品ラインナップ“IDÉE Daily Cloth”のテキスタイルの中から4つの柄をセレクトして作った靴下。毎日のように使ってもらいたいという思いを込めて“Daily Socks”と名付けました。鮮やかなカラーとユニークなデザインがコーディネートのアクセントに。ギフトとしてもおすすめです。
商品ラインナップ“IDÉE Daily Cloth”と同じ図案のマスキングテープが登場。部屋の壁にポストカードや写真を留めたり、食べきれなかったお菓子の袋をとめたり。 一度貼っても剥がせるマスキングテープだからこそ、気軽に日々のいろいろなシーンでお愉しみいただけます。
商品ラインナップ柚木氏がイデーのためにデザインした浴衣。暮らしの中でよりくつろげる時間を過ごしてほしいと、柚木氏が“KUTSUROGI”と名付けました。「注染」という染色技法で職人が手作業で染め、同じ柄でも一枚ずづ微妙に異なる風合いをお愉しみいただけます。
“KUTSUROGI”特集柚木氏がイデーのために描き下ろした原画をもとに「型染工房たかだ」にて100枚限定で型染タペストリーをつくりました。ひとつひとつすべて手仕事で仕上げており、少しずつ表情が異なる型染の魅力を存分にお愉しみいただけます。
※柚木氏が100歳を迎えた際のアニバーサリー限定商品です。
柚木氏がイデーのために描きおろした「アルファベット」と「シマウマ」、2種類の図案を使用して限定のチェアとランプをつくりました。FERRET CHAIRとDJANGO ARM CHAIRのシートの張り地に、AIL VASE LAMPはシェードに生地をあしらいました。ランプは図案が引き立つよう、陶器のベース部分もホワイトにした特別仕様です。
商品ラインナップ1000年もの歴史のある紙の産地、山梨県市川大門にあるメーカーと、山梨県出身のプロダクトデザイナー、深澤直人氏が作った「SIWA | 紙和」。軽くて風合いのある和紙の良さはそのままに、耐久性があり水に濡れても破れない新しい和紙「ナオロン」を使用。ひとつひとつ職人がミシンで縫製しており、縫い目が目立たないのも特長のひとつです。
柚木氏がイデーのために描き下ろした図案をシルクスクリーン印刷したイデーオリジナルのSIWAシリーズです。
柚木氏が共感した国内外のクリエーターや作家とのコラボレーション、大学や美術館への協力など、柚木氏とのものづくりがきっかけでさまざまな活動をおこないました。
藍染料の「蒅(すくも)」の産地・徳島県で2015年に創業し、藍の栽培から染色・仕上げまですべて一貫して行う世界から注目される藍師・染師 BUAISOUと染色家 柚木沙弥郎氏のコラボレーション企画。
商品ラインナップポルトガルのデザイナー セリア・エステヴェシュによるラグブランド「GUR」。
縫製工場で発生する残布を使うリサイクルのアイデアとポルトガルの伝統的な織りの技術、世代も国籍も超えたさまざまなクリエイター達による自由な発想が出会って新しい空気を吹き込まれたポルトガルメイドのラグです。彼女のものづくりに柚木氏が共感し、柚木氏の図案である「4つのパン」と「カタチ」を制作しました。
女子美術大学からの依頼で柚木沙弥郎氏の図案を使用した広幅注染を制作。柚木氏は約50年にわたり女子美術大学にて教鞭を取り、その間に広幅の注染を開発し指導に当たりました。当時教材として使用していたイチジク柄のデザインを採用しました。
染色家、1922年東京生まれ。柳宗悦が提唱する「民藝」との出会いを機に、芹沢_介に弟子入りし染色の道を志す。1955年、銀座のたくみ工芸店にて初個展。以降 50年以上にわたり制作を続け、数多くの作品を発表する。フランス国立ギメ東洋美術館、日本民藝館、世田谷美術館をはじめ国内外で展覧会を開催し、好評を博す。2024年1月逝去。
インタビュー記事『美意識とユーモアが暮らしを彩る、染色家の住まい』(interview&photo『LIFECYCLING』)
柚木沙弥郎 作品ラインナップ