Life in Art アートのある暮らし

くらしを彩る温もりのガラス陶芸 奥田 康夫

学生時代に陶芸とガラス造形を学び、
現在はガラス陶芸家として活動する奥田康夫さん。
「光を透過しさまざまな表情を見せてくれること、それが綺麗なこと」と
ガラスの魅力についてシンプルに語ってくれました。
ガラスは私たちの生活に非常に身近な素材ですが、
奥田さんの作品には彼だからこその技術と知恵が詰まっていました。

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陶器とガラス

奥田さんの作品で最も特徴的なのは、型に素焼きの陶器を使用している点です。
陶器の型の上でガラスを熔かしたり変形させたりするのですが、作品ごとにガラスの熔け方が微妙に異なる為、型を使用していても同じ形のものはありません。

陶芸出身ならではの技術とノウハウを用いた製法は、他には見られない独自の表現方法として確立されています。素焼きの型の出来が最終的な仕上がりを大きく左右するため、型を制作する工程にはたいへんな力が注がれているそうです。

素焼きの型と同じ窯で焼成されたガラスは、いわゆる吹きガラスで作られた作品とは見た目の印象も異なります。気泡がたくさん閉じ込められた素地が、光を受けてきらきらと輝きます。

感覚とデータ

奥田さんの作品は全て粒状のガラスが使われています。ガラスの量と作品の大きさは比例し、「この大きさの器を作るのに必要なガラスの分量は〇〇g」といったような、緻密な計算に基づいたデータと積み重ねた経験から制作しているといいます。
色についても同様に、透明のガラス粒に対して何%の色ガラスの粒を混ぜ合わせていくかで、わずかにニュアンスが変わってくるため、ここでも直感より数値が重視されます。
芸術作品=感覚的というイメージとは裏腹に、膨大な数値データに裏付けられた作品は私たちに新鮮な感覚を与えてくれます。
奥田さんの作品にとって、数値データは非常に大切な要素のひとつと言えます。

作品のモチーフは、海・空・植物・動物など自然界に存在するもの。その中で直感的に惹かれた形や色を元にイメージを膨らませ、自身の記憶や思い込みをも混ぜ合わせて表現しています。
配色をガラスのグラム数値に置き換え、ラフスケッチから素焼きの型を成形し、作品に落とし込む。型への彫刻は、頭の中のイメージを優先させてフリーハンドで彫ります。

「生活の中で目にしたり触れることで、楽しい気分になる、温もりが感じられる作品を目指して制作しています」

今とこれから

2018年のイデーの展示会で初挑戦となった壁掛けシリーズには、まだ試していない多くの可能性があるようです。
器についてもアイデアやイメージはまだまだ尽きることなく、挑戦が続きます。

「ひとつの制作技法の中にまだ気付いていない部分が秘められていると期待し、ここからどんな変化を遂げていくのか、自分でも楽しみにしています」

奥田 康夫

奥田 康夫おくだ やすお

東京藝術大学で陶芸、同大学院でガラス造形を学ぶ。同大学での教育研究助手としての勤務を経て、千葉に築窯し工房を構える。現在は陶芸とガラス造形の両方の技術を用いて作家活動をする傍ら、大学の非常勤講師として学生の指導にもあたっている。

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