Life in Art アートのある暮らし

Interview with Aruse Ryosuke

京都を拠点に活動するイラストレーター、
有瀬龍介さんは手描きによる繊細なタッチを得意とし、
静物画、抽象画、墨絵など幅広い作品を生み出しています。
わたしたちは京都の有瀬さんのご自宅を訪ね、
絵を描きはじめたきっかけや創作活動にまつわるさまざまなエピソードを伺いました。

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絵を描きはじめたきっかけについて教えてください。

父が画家志望だったので、幼い頃から家に父の描いた油絵が置いてあったりしました。
中学生くらいの頃から、グリーティングカードとか針金で作ったアクセサリーなどを作ってお店に置いてもらって売っていました。そうやって作ったものが売れて、好きな洋服を買ったりするのが楽しかったですね。

高校でファッションの勉強をして、その頃から徐々に絵を描く方が好きなのかな、と思いはじめました。当時は五木田智央さんやフランシス・ベーコンの絵を真似して描いたり、丸善書店によく画集を見に行ったりしていました。美大受験のために予備校に通っていた頃は、サム・スザフランや田中一村、伊藤若冲の描く植物画が好きでよく見ていました。美術館でアンディ・ウォーホールのドローイングを見たのも印象に残っています。

20歳くらいからはアルバイトしながら絵を描きはじめて、たまに発表するという事をしばらく続けていました。

モチーフが抽象から具象まで幅広いですが、発想はどういったところから生まれるのでしょうか。

ものの構造を観察するのが好きなので、何かを観察している時にインスピレーションが湧くこともありますし、なんとなく思い浮かんだものや、記憶のイメージだったりもします。日々いろいろなものを忘れていくなかで、無意識に取捨選択した結果残ったものかもしれません。

こんなのどうかな?とアイデアが浮かんでもメモしたりせずに、いざ描く時にまだ覚えていたら描く、というようにしています。

描いていて苦しいとき、あるいは享楽の瞬間はどんな時でしょうか。

描く前も描き出してからもすごく悩んだり迷ったりしますが、進めていくうちに考えても仕方ないなと思い直す、という事を繰り返している気がします。描かないとなぁ、と思うのになんともスイッチが入らない、という時が苦しいです。四六時中絵のことは考えていても描ける時ってふと来る感じで、流れに任せるしかないのかなと最近は思うようになりました。
描いている時に「これなんか見たことあるな」と思って手が止まる時もしんどいですね。気にせず続けるようにしていますが、ボツになることもあります。

一方で、物凄くキツイ時に描く事で癒されると感じることもあります。僕の場合は描いていて楽しいというのはあまりないのですが、ときどき無心になれる瞬間があって、その感覚が凄く心地いいです。絵を描いているんだけれど、ようやく描く事について考える事から解放されるというか。

描いてるうちに盛り上がってきて「天才かも」とか思うこともあるんですが(笑)、冷静になって見返してみて「あんまりだな」と思うことも多くて、つくづく不思議な作業だな、と思います。

有瀬さんにとって絵を描くとはどういった行為なのでしょう。

この質問に関しては普段から自問自答しています。何故自分は絵を描きたいと思うのか…謎ですね。
自分の場合は、制作したり良いものを見たりした時に自信を失うことが多いのですが、それでもなんとか続けて来られました。

人と話すことや誰かの考えを知ることも好きですが、同じ認識を共有するのはつくづく難しいなとも思います。無理なのかな、と思うこともあります。
言葉で伝えにくいことや、そもそも言葉では表現しきれないこと。そういうものが自分が絵を描く動機になっているのかもしれません。

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有瀬 龍介

有瀬 龍介あるせ りょうすけ

1983年生まれ。京都在住のイラストレーター。2000年頃より活動をスタート。 手描きによる繊細なタッチを得意とし、古い本の挿絵、書物、身近にある植物・食物などから着想を得た作品や、抽象画、墨絵など、幅広いテーマで作品を生み出している。