デンマークのコペンハーゲンに拠点を置くクリエイティブスタジオ、Atelier Cph(アトリエ・シーピーエイチ)。アートディレクターであるMandy Rep(マンディ・レップ)と、トレンドフォーキャスターであるSara Ingemann(サラ・インゲマン)の二人によるクリエイティブユニットです。
抽象モチーフや幾何学的なフォルムを中心に、日本の侘び寂びにも通ずるシンプルで美しい作品を生み出しています。彼女たちの遊び心あふれるポスターコレクションをご紹介します。
2024年4月、デンマークコペンハーゲンのサラさんのご自宅兼アトリエに伺いました。その日は朝から小雨が降り続いていてまだまだ肌寒い季節でしたが、ご自宅のドアから満面の笑みで迎えてくれたサラさんに、ふわっと心が温かくなったのを覚えています。
Atelier Cphの作品はサラさんとマンディさんの二人で制作されていて、布や紙のコラージュされた柔らかな表現、鉛筆や木炭によるシンプルで力強いドローイングなど、私たちの暮らしに馴染みながらリズムも与えてくれるのが魅力です。
サラさんのご自宅はため息が出るような美しさで、白を基調とした高い天井の心地よい空間に上質なグレーのソファ、ヴィンテージのラウンドテーブル、テーブルを囲む4脚のチェア、サラさんの作品はもちろんたくさんのアーティストの作品が飾られていました。美しいアート作品それぞれが空間のなかで最もふさわしい場所に丁寧に飾られていて、さりげなく置かれている果物でさえアート作品のようでした。
サラさんにたくさん作品をご紹介いただいた中から、今回北欧らしいナチュラルやヴィンテージ、モノトーンを基調としたモダンデザインなどさまざまな空間と相性のよいポスターをセレクトしました。イデーでは、ポスターのイメージに合わせてすべての作品を北欧らしい丸み帯びた木製フレームで額装しています。
「私たちのタイムレスな作品を、日本の皆さんにも楽しんでほしい」
日本のミニマルなデザインからも着想を得ているという彼女たちのポスターは、私たちにきっと豊かな暮らしを与えてくれると信じています。
イデーマーチャンダイザー。主にアートのバイイングや商品開発、エクステリアガーデン用品のセレクト、ヴィンテージ家具の買い付けなどを行う。北欧のヴィンテージオブジェやアート作品などを自宅に飾り楽しんでいる。休日は双子の子供とキャンプ。
イデーのバイヤーがAtelier Cphの創作活動やインスピレーションの源、コペンハーゲンでの暮らしなどについて話を聞きました。
はじめにAtelier Cph(アトリエ・シーピーエイチ)について教えてください。
Atelier Cphでは、Mandy Rep(マンディ・レップ)とSara Ingemann(サラ・インゲマン)が個性的なアートポスターや彫刻、限定版のアートピースなどコラボレーションしながら創作活動を行っています。
私たちはブランドやプロジェクト、プロトタイプの制作などで、新しいアイデアを自由に試したり探求できる空間を作りたいと考えていました。アトリエは創造性の限界を広げる完璧な環境。時を経て、私たちの活動は限定版の作品や大きな壁画、彫刻へと発展してきました。オブジェの制作を始めたこともとてもエキサイティングなことです。
作品は抽象的な形や幾何学的なフォルム、日本のシンプルさ、ミニマリスト的なアプローチなどからインスピレーションを得ることが多いです。
目標は流行に左右されることのないタイムレスな作品を創り出すこと。私たちの創作の道のりや、侘び寂びの美しさを愛する気持ちは作品ひとつひとつに表れています。
コペンハーゲンでの生活について教えてください。
コペンハーゲンは創造性・文化・コミュニティがうまく融合していて、たくさん魅力がありつつも比較的コンパクトにまとまっているところがとても気に入っています。
この街の豊かな歴史とモダンデザインは、いつも私たちにインスピレーションを与えてくれます。都会的な生活と自然がバランスよく調和していて、自転車で街を散策したり、地元のパン屋さんやレストランで楽しんだり、活気のあるエリアがいろいろとあります。
いつも新しい展覧会が開催されていたり、音楽フェスティバルやさまざまな文化的アクティビティがあるのも魅力です。街中にクリエイティブがあふれているので、私たちのようなアーティストにとっては理想的な街だと思います。
コペンハーゲンは全体的に生活の質が高く、ウェルビーイングを重視しています。
あと、いたるところに水辺がありますよ。
創作活動で大切にしていることを教えてください。
私たちのアートワークは、抽象的な形や幾何学的なフォルム、建築様式、ミニマルなデザインアプローチ、日本のシンプルなデザインからも深くインスピレーションを得ています。これまでのコレクションでは、バウハウスやデ・ステイルといったムーブメントや、建築のドローイング、昔の古い再生紙、実家で余っていたファブリックなど、さまざまなものから影響を受けています。
創作のプロセスでは遊び心と好奇心を優先しています。新しい技法や素材の実験を重視し、すべての作品に触感的な要素を含めたいと考えています。視覚的なノイズを排除して、形と色の調和のとれたバランスを実現することに重点を置いています。
私たちの目標は、時代を超越したクオリティを持つアートを作ること、そして手に取っていただいた方に長く大切に使っていただけるようにすることです。
あとは旅先で得られるインスピレーション。些細なことからもたくさんのインスピレーションをもらえます。休みを取って自然の中に身を置くことをとても大切にしています。心が静かになると、新しいアイデアや創造する力が湧いてきます。
日本の方々にどのように作品を楽しんでいただきたいですか?
誰もがアートに親しめるように、長年あるいは一生愉しんでいただけるように、私たちはタイムレスな作品作りを心掛けています。
新しい作品を制作する際に重視しているのは、落ち着きとバランスです。視覚的な刺激が氾濫する世界で、私たちはノイズや不要な複雑さを避け、形と色の調和を大切に作品を作っています。
作品から穏やかさや瞑想の感覚を見出していただけたら嬉しいです。
私たちの作品は、視覚的に魅力的でありながら心が落ち着くようデザインしています。リビング、オフィス、プライベートな空間など、どんな場所に飾ってもアートが調和とインスピレーションをもたらしてくれることを願っています。
日本の家はミニマルな空間も多いと思いますが、私たちのアートはとても相性がよいと思います。落ち着いた部屋の中でさりげなくヒントを与えたり、インテリアに溶け込むような存在になれたらいいですね。
アーティストの中には自分の作品を目立たせたり、中心に置いたりすることを好む人もいますが、私たちのアートはそうではありません。アートをインテリアと組み合わせることで、すべてのピースがつながればと思っています。
家はものや家具、ウォールアートがシームレスに調和し、考え抜かれたデザインと機能性を兼ね備えた空間であってほしいです。ていねいに暮らしを紡ぎ、安らげる場所になることを願っています。
デンマークのコペンハーゲンに拠点を置くクリエイティブスタジオ。アートディレクターであるオランダ人のMandy Rep(マンディ・レップ)と、トレンドフォーキャスターであるデンマーク人のSara Ingemann(サラ・インゲマン)が2012年に設立。共同でクリエイティブ活動を行う。