Life in Art アートのある暮らし

TAGAMI描いて描いて、描き続けて

「二子玉川に、むかし通っていたセイタイキョウカイの建物が変わらずあったんだよ。」
嬉しそうに微笑みながら私たちの前に現れた画家TAGAMIこと田上允克氏。少し緊張していた私たちは「えっ?生態?整体?」と、突然の言葉に拍子抜けして笑いが溢れ、たちまち和やかな出会いの瞬間となりました。田上氏が40代の頃、当時まだ珍しいとされていた中国の「気」について興味を持って、少しの間整体協会に通われていたというのです。
作品同様、穏やかで不思議な魅力の田上氏に惹きよせられるように、会話が始まります。ご本人について、また作品が生まれた背景についてお話を伺いました。

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TAGAMI

田上 允克たがみ まさかつ

1944年山口県の農家に生まれる。
大学で哲学を学んだ後、29歳で上京。
偶然入ったアトリエで絵を描くことの楽しさに取り憑かれ、以来40年以上「時間が足りない」と休む事なく1日平均3〜7点の作品を描き続けている。

(左)(右)趣ある田上氏の自宅

天職との出会いやりたいことが見つかった!!

田上允克氏は1944年山口県小野田市の農家に生まれました。大学で哲学を学んだものの、何にも興味がもてず、映画を見ても、海外にいっても、意見というものが一切ない人間だった、と語ります。仕事にも就かず、ただ、ただ家にいた20代。当時は高度成長期の真っ只中、田舎の小さな町では稀有な存在だったことでしょう。

そんななか、体裁を気にかけた母親から言葉をうけ、田上氏は29歳で上京します。新聞配達の仕事についてまもないある日、偶然入った目黒のアトリエ(鷹美術研究所)で、絵を描くことの楽しさに取り憑かれ、すぐに父親に電話を掛けたそうです。

(左)描きためた作品は大切に保管されています。(右)インタビューの様子

田上氏「やりたいことが見つかった!仕事をしながらなんて到底できないことだから、一生面倒をみてください!」
「私が死んだらどうするんだ。」
田上氏「その時は自分も死ぬ!」
父上もただならぬ熱量を感じ、承諾したそうです。

田上氏はそのまま就いたばかりの仕事を辞めて、以来40年以上休むことなく、日々数枚ずつ作品を生み出しています。

「毎日描いているよ。昨年は毎日10枚ずつ描いていたかな。」

平均して年間2千枚ほど描くそう。作品の片隅に記されているのは、日付とその日描いた枚数で、独自のカウントで表記したシリアルナンバー。これまでに生み出した作品数は、ざっと4万点は超えるといいます。描くことにしか興味がなく、描くことに没頭していたあまり、展覧会で発表する機会も少なく、作品のほとんどは現在のアトリエである田上家の蔵に収蔵されています。

TAGAMI作品

尽きることのない好奇心時間が足りない!!

昔は内面から溢れる創作意欲に対して、「時間が足りない!」と追い立てられるように作品づくりに没頭していました。油絵や版画も制作するうえ、ひとつひとつの制作に時間がかかっては、アイデアが湧くスピードに手が追いつかない。そのため、身近な紙に描いて構図を考え、台紙に貼っていくという現在のスタイルが多くなったといいます。やがて追い立てられる感覚はだんだん薄れ、描くことが日常の一部となって、今では瞬間的に思い浮かんだものを、体が動くまま描けるようになったそうです。

なぜそこまで絵を描くことにのめり込んだのかー。 そんな問いに田上氏は「わかる面白さ」だと話します。学問と同じように、描くほどに「こういうことなんだ!」と理解していく面白さ。自分のためでも誰のためでもなく、ただ描くことに対する好奇心、探究心が、エネルギーを絶やすことなく、40年以上も手と感覚を突き動かしてきたのです。

TAGAMI作品

描き続けることで得た感覚デッサン、デッサン、またデッサン

作品は抽象画から漫画風なものまで多様です。描かれているモチーフも、人の顔、動物、線、記号とさまざま。創作対象の背景について詳しく聞くと、「いや、それは違う」と答えます。インスピレーションの元も、テーマやスタイル、意図も持たず、ただ内面からあふれ出てくるものをその瞬間、瞬間感じたままに絵の具で表現しているだけで、創作対象そのものへの深意はないそう。

田上氏の作品はどれも絶妙な構図と独特の色彩が印象的で、力強く不思議な魅力に引き寄せられます。四角い紙の中で配置される、人の顔や迷いのない意志をもった線。手の近くにあった色を使っているだけで色に特別な意味はないそうですが、たくさん色をつかっても散漫せず美しくまとまっています。

絵を描きはじめたころは、さまざまな画集や展覧会を見ても、何がよいのかわからなかったといいます。そこで、他の作品は見ずに数年間ひたすらデッサンに集中したところ、頭の中でモチーフとなるパーツを、意図した通り動かせるようになり、デフォルメした人物の絵に対しても、これ以上描くと人間ではなくなるな、という感覚がふっとわかるようになったそうです。その後、マチスやピカソの展覧会に足を運ぶ機会があり、作品の素晴らしさに衝撃を受けたそうです。誰に教わったわけでもなく、偉大なる先人に影響を受けたわけでもなかったけれど、自分で手を動かすことで、自身の眼も育っていったようだ、と。純粋に描いて描いて、描き続けたことによってようやく辿りついた感覚なのかもしれません。

最後に、田上氏から「仙人入門」という中国の仙道の修行法について書いてある本を紹介していただきました。またもや意表をつく感じですが、話を伺った後では何となくしっくりきます。

彼が独自の生き方でただひたすら描くことだけに没頭できたのは、環境がとても特別だったこともあると思います。自分は欠陥人間だと笑いながら語った田上氏。きっといまも日本家屋のアトリエで、煩悩に惑わされることなく仙道修行のように、まっとうに絵を描くことだけを探求し続けていることでしょう。

今回イデーでは、田上氏のアトリエに収蔵されている膨大な作品の中から、部屋に飾ることを意識して、インテリアのアクセントになる魅力あふれる作品を62点セレクトしました。それぞれの作品をどのように感じるかは私たちに委ねられています。

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EXHIBITION : TAGAMI EXHIBITION 2016.4.27 wedまで開催

展示会は終了しています

植物、緑色に塗られた顔、空飛ぶ犬、地形…
作品の背景に思いを巡らせて創作の対象を聞くと「いや、違う」という答え。

インスピレーションの元も、テーマやスタイル、意図も持たず、
ただ内側からあふれ出てくるものを
そこにあった色の絵の具で表現しているだけであると。

百聞は一見にしかず。
作品をどのように観るかは私たちに委ねられています。

  • Café&Meal MUJI新宿

    〒160-0022 東京都新宿区新宿3-15-15
    新宿ピカデリー B2F
    open. 11:00〜21:00(L.O. 20:30)

  • イデーショップ 自由が丘店

    〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2-16-29
    tel. 03-5701-7555
    open. 11:30〜20:00、11:00〜20:00(土日祝)

TAGAMI Exhibition 2016.4.1 fri - 4.27 wed IDÉE SHOP Jiyugaoka 3F Art Gallery