ACT MOBILE LAMP

ポルトガルを拠点に活動するドイツ人デザイナー、クリスチャン・ハースがデザインしたアクト・モビール・ランプ。幾何学的な存在感を持ちながらも明るさに満ち、ミニマルかつポエティックなオブジェは、絶え間なく形を変えるキネティック・アートにインスピレーションを受けて作られました。縱につながれたチューブは、エレガントな灯りの揺らぎを生み出すよう、絶妙なバランスに配されています。

INTERVIEW WITH Christian Haas
ACT MOBILE LAMP

HOW IT WORKS

垂直方向に並ぶパイプに内蔵された光源が、テーブルトップや床を照らします。消灯時には、ミニマルながら確固とした存在感を放つモビールとして空間を演出。

同じ太さのパイプを縦横に、入念に計算されたバランスで配しています。暗い場所では黒いパイプが存在感を弱め、柔らかな灯りが姿を現します。

モビールの動きに合わせて揺らぎ、重なる光の輪。シンプルな要素の組み合わせから多様な表情を生み出す、モビール本来の特徴を活かしたランプです。

LINE UP

  • ACT MOBILE LAMP MEDIUM

    ACT MOBILE LAMP MEDIUM

    W450×D250×H660mm
    本体:真鍮ブラックニッケルメッキ
    電球:LED 25W相当×4灯

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  • ACT MOBILE LAMP LARGE

    ACT MOBILE LAMP LARGE

    W850×D350×H1050mm
    本体:真鍮ブラックニッケルメッキ
    電球:LED 25W相当×5灯

    商品詳細・購入

INTERVIEW with Christian Haas Interview & text by Hisashi Ikai

繊細な感覚から、使うものの心に直接語りかけるようなデザインを生み出すクリスチャン・ハース。〈アクト・モビール・ランプ〉は、どのような背景から生まれたのだろうか。

ACT MOBILE LAMP Designed by Christian Haas(1:00)
Video by Luis Espinheira

部屋のなかをぐるりと見回してみると、インテリアはいろんな要素が絡み合いながら成立していることが分かる。

「室内を明るくするという明確な機能をもっているせいでしょうか。なぜか照明器具を見ていると、それだけが独自で存在しているように僕の目には写ってしまって」

クリスチャン・ハースは、空間に溶け込み、ほかの家具とも相性の良い美しい照明をつくることができないものだろうかと、思考を巡らせていた。

長年の取り組みの結果、イデーから発表したのがこの〈アクト・モビール・ランプ〉。フィナボッチ数列の法則に基づいた黄金比で、バランスを取る複数の金属チューブ。その先端からはLEDの光が下方向に照らし出される。そのグラフィカルな構造に加え、注目すべきはキネティック・アートのような動きだ。

「一見しただけでは、照明なのかオブジェなのか、判断がつかないでしょう。このように明かりをつけていないときは照明器具としての存在を消し、いざ点灯すると予期しないような効果を生み出すものがつくりたかったんです」

ハースが照明のデザインを手がけるのは、2010年に発表した〈ロープス〉に続いて2作目が、前作でも同様のアイデアを踏襲している。

「自由に動くことで、さまざまに表情を変える明かりです。こうしたコンセプトを支えているのは、近年ようやく一般にも浸透したLED技術。LEDは小型で長寿命なため、プロダクトに内蔵しやすく、しかも熱をほとんど発しないため、周辺部材もいろいろなものを選べるようになりました。照明はここ数年で、デザインの可能性を大きく広げた領域だと思います」

しかし一方で、LEDの光は冷たくて工業的と言われ、一般家庭では敬遠される傾向があるのも事実だ。クリスチャン・ハースは既成概念にとらわれない“動く照明”を作ることで、LEDも感覚的な明かりなることを証明したかったとも言う。

「照明は手元や部屋全体を照らし出すための装置ですが、空間が明るくなったことでそこに人が集まり、新たな時間が始まるように、もっと人の感覚に直接的に影響を与えるものだと思うんです。この揺らぎのある光のもとでは、これまでとは違った感覚で物事を捉えることができたり、家族や友人と過ごす時間にも変化が生まれるんじゃないでしょうか」

風が吹いたり、手で触れたりすると、バランスをとりながらゆっくりと回り出す光の輪。無意識でいても、ついついその行方を目で追ってしまっていることに気づく。それは風にそよぐ木の葉や水面に広がる波紋をぼんやりと眺めている感覚にも似ている。

このようにユーザーの感情と触れ合いながらも、ほかのインテリアとの相性もうまくいくようにと、プロダクトとしては極めてシンプルかつ明快な表現に抑えた。

「ヨーロッパのモダンな空間にも合いますし、日本古来の伝統的な和室においても素敵だと思います」

空間演出としての役割だけでなく、しっかりとした光源としても活用できるように、各々のチューブの先端には集光レンズをはめ込み、LED一つひとつの照度が確保されるようにするなど、機能面もしっかりとサポート。天井高くに吊るしテーブルの上を照らすだけでなく、床面ぎりぎりに低く垂らし、床面に光を映し出すのもオススメだ。

Profile

Christian Haas

ミュンヘンを拠点に活動を始める。2007年にはパリにスタジオを構え、磁器、ガラス製品、照明、家具、インテリアとさまざまな分野へデザイン活動を広げる。2014年後半からはポルトガルのポルトを拠点としている。
Rosenthal、Villeroy & Boch、Karimoku New Standard、ARITA「2016/」、Theresienthalなど世界の名だたるブランドにデザインを提供。平静さとスタイルとを遊び心のあるハーモニーで表現する彼の作品は、純粋でインスピレーションを感じさせるラインを用いて表現されている。