RÉTROSPECTIVE DE SERGE MOUILLE

セルジュ・ムーユは1950年代前半から60年代の半ばまでという短期間に照明器具の開発、制作を行いました。自然の造形、素材との対話、そして職人的技術によって生まれた一連のランプは、同時代に活躍したシャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェ、ジョルジュ・ジューヴらの作品と同様、独特の輝きを放っています。

彼の作品はその希少性も手伝って、世界中の建築家やデザイナー、コレクターからこれまで絶大な支持を得てきました。1988年にセルジュ・ムーユが没し、時間が経過した今も世界的な再評価がますます高まっています。

イデーがセルジュ・ムーユと出会い、再生産を実現して以来、大切に作り続けている美しいランプの数々を、あらためてご紹介します。

Only New, Always New, New Again イデーとセルジュ・ムーユとの出会い

黒崎輝男
イデー ファウンダー
流石創造集団株式会社 C.E.O

新しいものだけ、時代の先頭を切り拓くものだけを創りたい。と思い、若い頃からデザイナーと知恵を合わせて、マーケットとも社員ともなんとか折り合いをつけながらやってきた。先頭を切る喜び、前衛である姿勢が企業としてのメッセージとなった。

その反動か、今度は、もっと長くつきあえるもの、変わらずに愛され続けられるもの、普遍的なデザインを作って行こうと考える。いつも新しいものなんて本当に有るのだろうかと思うと興味は古いものに向かう。パリの蚤の市やロンドンのポートベローには今でも産業革命のころの道具や工芸がある。人には終焉の時があるが、良いデザインはいつまでも生き続け、価値を増し続ける。そして毎日でも新しく思えるものがある。

このセルジュ・ムーユのランプは1980年代に僕がパリのクリニアンクールの蚤の市でゴミのように積んであった照明器具の中から見つけた。瞬間、これって新しい、と思った。骨董屋のおじさんは1950年代のデザインの教授でありアーティストでもあるセルジュを良く知っていた。そこでパリの応用美術学校を訪れ、彼にはじめて会った。50年代当時、Galerie Steph Simonというところではイサム・ノグチやシャルロット・ペリアン等とともにこのセルジュ・ムーユのランプも展示会をされていたそうだ。初対面で彼と意気投合した。パリ郊外のChateau Tierryという村にある彼の家に招待してくれたので、ちょうどその時パリにいた若きマーク・ニューソンをつれて行くことにした。サンジェルマンの花屋でプレゼントの花を選ぶとき、その頃季節だった大きな鶏頭(ケイトウ)を有るだけ買った。セルジュは自動車や乗り物にも興味が有り、素材そのもののセンシュアルな感触を好んだ。ケイトウの花を触り愛でている様は今も忘れられない。

その後僕も日本に招待し、彼は図面を持ってやってきた。そうして当時、僕が経営していたイデーからこのランプを発売した。一度マーケットからはずれたものも、こうして再び新しく発見され、また生まれかわることもあるのだ。イデーの理念の中で大切にしてきたものの1つにこの普遍的な新しさと言うものがある。いつまでも生き続ける新しさ、セルジュ・ムーユのランプの再生はむしろフランスで評価されている。

(了)

LAMPADAIRE 3 LUMIÈRES

LAMPADAIRE 3 LUMIÈRES ランパデール トワ ルミエーレ

  • W1100×D800×H2100
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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1952年、ジャック・アドネの勧めで「Compagnie des arts francais」のために作られたもの。短く強い足から真っ直ぐ上に伸び上がり、見る者を不安な気持ちにさせるトカゲの化石のようなリフレクター。しかし外へと開かれた3本のアームは、空間を大らかに抱きしめるよう。セルジュ自身にとって「これはアグレッシブな照明、昆虫、ナナフシだ」との言も残っています。V字型に分かれた前脚が湾曲し、先に向かって細くなるスタンドは、まさに昆虫の関節のよう。

分岐する3本のアームとリフレクターはそれぞれ回転して角度を調整できます。天井に向けて部屋全体を照らす機能と、下に向けて直接テーブルや手元を照らす機能を同時に果たします。さまざまなかたちに変幻しながら、しなやかにバランスを保つ、その不思議な安定感も魅力です。

LAMPADAIRE 1 LUMIÈRE

LAMPADAIRE 1 LUMIÈRE ランパデール アン ルミエール

  • W450×D470×H1700
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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1953年の作品。LAMPADAIRE 3 LUMIÈRESと並び、より空間に馴染みやすく扱いやすいアイテムの必要性を感じて作られた1灯タイプです。

同じシリーズにも関わらず、LAMPADAIRE 3 LUMIÈRESと LAMPADAIRE 1 LUMIÈREは非常に異なる性質を持っています。アグレッシブなLAMPADAIRE 3 LUMIÈRESは周りの空間を抱きしめる昆虫。それに対して、スレンダーでエレガントなLAMPADAIRE 1 LUMIÈREの描く線は植物の葦を彷彿とさせます。

リフレクターの角度を変えることで、さまざまな光の表情を生み出します。

APPLIQUE MURALE 1 BRAS PIVOTANT

APPLIQUE MURALE 1 BRAS PIVOTANT アプリク ミュラル アン ブラ ピヴォタン

  • L1400×H500
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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このランプが初めて登場したのは1953年「Paule Marrot and Her Friends」展。アームはほぼ直角に曲がり、壁の固定盤を基点として水平方向に旋回します。アームの先には玉継ぎ手を介したリフレクター。このモデルには、水平方向と垂直方向、それぞれの長さの違いによる数え切れないほどのバリエーションが存在していました。水平方向のアームがわずかに下に傾くことで、空間の中でダイナミックにバランスをとっています。

APPLIQUE MURALE 2 BRAS PIVOTANT

APPLIQUE MURALE 2 BRAS PIVOTANT アプリク ミュラル ドゥ ブラ ピヴォタン

  • L1750, 1000×H700
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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このランプは1954年にパリで開催された「Salon des arts menagers」の会場に初めて登場しました。当時の建築家たちは皆一様に、壁にランプを取り付けられるコンセントを並べるだけでしたが、セルジュはAPPLIQUE MURALE 2 BRAS PIVOTANTSを、テーブルやサイドボードを含めたダイニングルームのセッティングに組み込んで展示。上のライトは部屋全体を、下のライトは調理台やテーブルを照らしました。

SUSPENSION 3 BRAS PIVOTANTS

SUSPENSION 3 BRAS PIVOTANTS シュスポンション トワ ブラ ピヴォタン

  • L1250, 1000, 750×H550
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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1958年の作品。初期の作品であるAraignéesシーリングライトが、固定されすぎていたため動きがなく、納得のいくものではないと感じていたセルジュが、4年の歳月をかけて製作したSUSPENSION 3 BRAS PIVOTANTSで満足するアームの動きを実現させました。

それぞれ長さの異なるアームの先には、玉継手によってつながれたリフレクターが広がります。アームを旋回させてリフレクターの位置を変えることで、さまざま状況に合わせた光を作り出すことができます。

COCOTTE

COCOTTE ココット

  • W180×D320×H400
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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この小さなデスクランプは1957年に、フォントネーにある「young workers' centre」のベッドルームのために作られました。コストを抑えて製作することを課題とされました。セルジュは12種類の異なる脚のフォルムを提案し、脚の下にリングが付いているモデルが採用されました。リング部分を使って壁に吊り下げることで、ベッドサイドのウォールランプにも姿を変えることができます。

AGRAFÉE

AGRAFÉE アグラフェ

  • W300×D300×H650
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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1957年に作られた「AGRAFÉE Simple」(AGRAFÉEの原型)のリフレクターが照らす幅がちょうど良い、と製図板を使う人々の間で評判でしたが、テーブルを傾けるとリフレクターが重みで反転してしまうという問題がありました。そこで翌1958年に製作したAGRAFÉEでは、二重分節の構造を採用。デスクに取り付ける金具とリフレクターを固定する部分の2箇所の玉継手によって、作業面に対して自由に動かして調整できるようになりました。

BUREAU TRÉPIED

BUREAU TRÉPIED ビューロー トレピエ

  • W180×D300×H450
  • Black painted aluminium reflector and steel frame.
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1954年に作られた作品。斜めに広がる脚の上に、昆虫のような頭が載っているこのランプは、LAMPADAIRE 3 LUMIÈRESに似たアグレッシブさがあります。

セルジュはリフレクターの支柱に当時自転車の後輪フォークを採用しましたが、このアイデアはアンリ・ドゥ・ピエール(Perfection cyclesの生産者)の工房を訪れた際にひらめいたと考えられています。

リフレクターは、玉継手によって角度調節できます。

SCENES

DESIGNER'S PROFILE

Serge Mouilleセルジュ・ムーユ

1922年
12月24日、パリに生まれる。
1936年
The School of Applied Arts (応用美術学校)に入学。
Gabriel Lacroix (ガブリエル・ラクロワ)の元で銀細工師として習熟。
1941年
The School of Applied Artsを卒業。
1945年
自身の会社を設立。カトラリーなどのシルバーウェアをデザインする。
The School of Applied Artsにおいて銀細工師として教鞭。自身の金属加工スタジオを設立。
1952年
Jacques Adnet (ジャック・アドネ)によるFrench Art Companyに照明器具デザイナーとして招かれ、数多くの名作照明を製作。
1955年
Charles les Plumet賞を受賞。
1956年
サンジェルマンにSteph Simon(ステフ・シモン)が自身のギャラリー「Galerie Steph Simon」をオープン。パリのデザインシーンをリードしたこの場所でCharlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)、Jean Prouve(ジャン・プルーヴェ)、Isamu Noguchi(イサム・ノグチ)らの作品と共にムーユ作品の展示および受注生産がスタート。
Societe nationale des Beaux-Artsのメンバーとなる。
1958年
ブリュッセル万国博覧会にて名誉賞を受賞。
1959年
長い間患っていた結核ため仕事を中止し、山中で療養生活を送る。
1961年
若い照明デザイナーを奨励するためSCMを設立。新作照明を発表。
1965年
生産活動を終える。
1976年
パリ市メダルをアーツ&クラフツ部門にて授与される。
1981年
ポンピドー・センターで行われた「Paris-Paris」展にて照明作品が展示される。
1983年
パリの Galerie 1950 で回顧展が開催される。
1985年
ニューヨークで「Jean Prouve-Serge Mouille」展が開催される。
1988年
ポンピドー・センターで行われた「Les Annees 50」展にて照明作品が展示される。
12月24日から25日にかけての夜に亡くなる。
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