Artist Interview
ジュエリーに興味を持ったきっかけを教えてください。
大学は美大に進学し空間演出を学びました。ですが学ぶにつれ、大きな空間を想像することよりも掌に収まるくらいのものをつくる方が自分には向いているのでは、と思うようになりました。私の物事の初めは、いつもぼんやりとした好奇心や興味から始まりますが、卒業後進路を模索する中で、ジュエリーの企業に入社を決めたことがこの世界に進むきっかけになりました。
小規模なブランドでしたので、全員で販売をしながらデザインや製作と兼業する方もいて、いずれデザインにも携われるという会社の方針を魅力に感じました。
勤務先は都内の百貨店でしたので、日々たくさんの旬な商品を目にすることになりました。そうして時間を過ごす中で、当時世に出回っていた画一的な貴金属商品に次第に窮屈さを感じ、素材の豊富さやデザインの幅が広いアクセサリーに興味がシフトしていきました。
ブランドとして活動を始めたきっかけやストーリーを教えてください。
アクセサリーに興味がシフトした当時は趣味のビーズアクセサリーにも夢中になって、仕事をする傍ら友人の勤務先のインテリアショップで取り扱っていただいたりもしていました。
それから企業での経験を重ね、独立を考えるようになった時には「一度自分のペースでつくりたいものをつくってみようかな」と一息つく思いで行動に移し、ほどなく合同展示会への出展が決定。勤めていた会社も退職しました。
これまで働いてきて、トレンドや価格帯重視という制限の中で商品の企画をしたり、数々のアパレル企業との連携で仕事を進めたり、そういった経験が自分の基礎をつくり、オリジナルブランドという更なる経験に繋がったのだと思っています。
2006年アクセサリーブランドとしてスタートしましたが、2019年にジュエリーブランドにリブランドしました。ブランド立ち上げ当初と違い、世の中のジュエリーの価値観も大きく変わり発想も自由になった今となっては、貴金属の方がトレンドに縛られずつくりたいモノの世界観をしっかりと打ち出せ、長く愛用していただける作品づくりができるのではないではないかと考えました。
作品のデザイン・制作をする上で、大切にしていることや心がけていることはありますか
自分のブランドでありながら、常にスペシャリストの技術やこの職人にお願いしたい、という意識で取り組んでいます。そうすることで作品に対して客観的な視点を持ち、仕上がった時に毎回ワクワクとした高揚感を味わい、いつも新鮮な気持ちで作品づくりを続けるモチベーションとしています。
一点もののコレクションについては特に「工芸の魅力を、作品を通して表現したい」と常々考え、デザインインスピレーションを広げています。ストーリー性をも魅力に感じて愛用いただきたいと思っていますのでジュエリー職人さん、宝石研磨職人さんの存在は一際大切で、それぞれのセンスをも魅力として感じていただきたいと思っています。
アイデアの原点や、創造性のために何かしていることはありますか。
昔から大叔母と好みが合い、学生時代は大叔母のクローゼットを開けては古着などを譲り受けてきました。曾祖母の代から使っていた古い棚など今も愛用していますし、アンティークや古いものが好き、という感覚はずっと昔から私の根源にあり、インスピレーションの源となっています。
アンティークレースは、その中で私が愛着を感じて集めた素材の一つでした。前身のアクセサリーブランド《Curva(クルバ)》の時に、お世話になっていた職人さんにつくっていただいたレースを象ったプレート状のネックレスがあります。長い年月を経て受け継がれた素材が金属へと形を変えることで生まれる素材の持つ質感やストーリーの面白さに、当時から魅力を感じており、現在のコレクション作りの原点となりました。
いつも身につけたくなる、想い入れのあるアクセサリーがあれば教えてください。
20代の頃、海外の蚤の市や国内のアンティーク市でアンティークジュエリーを何度か購入しました。昔から手仕事や経年の風合いを纏った物に惹かれ、自然に手に取ってしまいます。アンティークジュエリーには、人がモノと過ごしてきた時間でしか生み出せないアンティークが纏う経年の風合いや、今はつくることができない手仕事が施されています。以前ある方が綴っていた「愛着と暮らす」というセンテンスにとても共感しました。愛着ある素材やモノを身の回りに置いた生活、作品を考える時間も自分が自分らしくいられる大切な時間なのだと感じますし、仕事柄今は自身の作品を着ける機会が多いのですが、ときおり昔購入したアンティークジュエリーを手に取っては、その時の情景や心地よい感覚を思い起こしています。
これからも大切にしていきたいことや未来への思いを教えてください。
一般的にジュエリーを選ぶ時は、宝石ですから石の価値や輝きが大事なポイントだと思います。《Curva y Ruri JEWELRY(クルバ イ ルリ ジュエリー)》も勿論、そういった石そのものの価値を重視した作品も多くありますが、私がルースを原石から研磨してつくるコレクションは、それとは逆を行く発想です。だからこそ、その世界観を共有してくださるお客さまにしっかりと届けたい、シンプルですがそんな強い思いを持っています。
モノの価値、人の価値観も多種多様になりつつある今、これまでの20年にジュエリーのデザインが幅広くなったように、これからの10年で石を選ぶ価値感も大きく変わるのではないでしょうか。そんな時自分はどんなものを身の回りに置くと心地がよいのか、自分らしさを表現できるのか、そういう視点で《Curva y Ruri JEWELRY(クルバ イ ルリ ジュエリー)》を選んでいただけたら本望です。
デザインイメージに合わせて選んだアンティークレースを石の形状に合わせて象り石枠を手づくりしています。長い時を経て受け継がれた素材の魅力を、新たな魅力として甦らせたストーリー性のある作品です。
Buyer's Comment
まず石の美しさに魅了され手に取ると、とても繊細な一片のアンティークレースに石が包まれているようなデザインが何ともいえず魅力的でした。デザイナー奥村さんのこだわりのデザインと職人の技が感じられる唯一無二のジュエリーです。