今年のイデーのクリスマスは "Weaving a Story" がテーマ。
暮らしとは、糸を紡ぎ布を織るようにいろいろなひと・こと・ものが通い合い織りなす物語。
あたたかなブランケットに包まって、あなたが織ったこの1年のストーリ―に思いを馳せながら、愉しいクリスマスを。
2022年秋にデビューした新しいテキスタイルブランド "kijinokanosei" とともに寒い冬に体も心も温かくしてくれるファブリックアイテムをつくりました。
監修・スタイリングにスタイリストの岡尾美代子さんをお迎えし、糸選びからオリジナルで丁寧にしつらえたオリジナルテキスタイルを使ったブランケットやぬいぐるみなど、この冬を彩る限定プロダクトをご紹介します。
尾州にある機屋で織られたオリジナルテキスタイル。昔おばあちゃんの家で見たような、どこかノスタルジックな雰囲気で、敢えてざっくりさせた質感。こちらのテキスタイルでマルチクロス、マフラー、クッションをつくりました。
尾州にある機屋で織られたオリジナルテキスタイル。大きなブロック柄と、北欧の白夜と極夜を連想させる色使いでモダンな印象。場所により毛の質感や肌触りの違いが愉しめます。マルチクロス、マフラーをご用意しました。
オリジナルのテキスタイルを使って仕立てたクマさん。とぼけた表情やポージングに思わず笑みがこぼれます。Toss!を主催する近藤靖代さんがひとつひとつ手縫いで仕上げたぬいぐるみです。
冬の足元を温めるルームシューズ。kijinokanoseiの今季オリジナルテキスタイルから、イデーが冬にぴったりの色柄をセレクトしました。クッション性がよく履き心地も抜群です。
今回イデーと kijinokanosei との限定プロダクトづくりの監修とスタイリングをしていただいたスタイリストの岡尾美代子さんと、長年生地にまつわる仕事を手掛ける kijinokanosei デザイナーの田中喜子さん、そしてイデーのファブリック商品を担当する林広祥の布好き3人組が、今回特別につくったオリジナテキスタイルについてあれこれ語ります。
林(以下 H)まずは今回監修とスタイリングを岡尾さんにお願いした経緯を。僕はファブリックが好きで、10年近くその仕事に携わっていまして。以前から岡尾さんのエッセイを読んだりしていて、ファブリックに愛着がある方だなと感じていました。それで田中さんに、今回の企画は岡尾さんとご一緒したいってお伝えしたら、田中さんも「私も岡尾さんが良いと思ってた!」って。
田中(以下 T)そう、同じことを考えていたんです。
岡尾(以下 O)それはすごく嬉しいです。ありがとうございます。
H岡尾さんがファブリックを好きな理由って何ですか?
O私は生活で使うキッチンクロスとか毛布とか、どちらかといえばファブリックというより「布もの」が好きなんです。見た目や色が好きとか、素材が気持ちいいとか、そういう単純な理由で選んでいて。それで、コレクションしているわけではないんですけど、同じような素材の布がたくさん集まっていって。
H気づいたらたくさんあったと。
O そう。すべて使っているのでだいぶ古びてますけど、それがたくさん積み重なっている状態が好きっていう感じかな。
H良いものは丈夫だから長い間使えてついつい溜まりますよね。
Oそうです、捨て時がわからない(笑)。
Hそれが良い布の魅力でもあり、布好きを困らせるところでもあるというか(笑)。
Oですね。古びてもみすぼらしくならないで、味わい深くなるのが本物の生地なのかなと思っていて。使っていくうちに風合いが変化していくのが好きですね。ごわごわしたり、とろっとしたり。ベッドリネンなんかは薄くなってきて裂ける寸前のとろとろの状態が気持ち良いんですよね。それを過ぎて裂けたらカットしてウエスにしてから捨てるようにしています。
Hそういった長く使える上質な布を織っている産業は今継続が難しくなっているとか…。
T私も機屋の職人さんたちも良質なものを追求したいんです。だけど、最近は干ばつとか地球環境の変化で素材の採れる量や質が落ちてきたりしていて、すごく工夫が必要になっています。
Hあとはコストのこともあって最近はプレーンなものが求められていて、各産地の機屋の織り方などの技術が発揮されないまま廃れていってしまうという話もありますよね。
Tそうなんです。
Hそれに対して、kijinokanoseiというブランドが昨年秋に立ち上げられて。機屋が持つ技術を活かすデザインや、きちんと生産背景にこだわったものづくりに僕は共感しました。それでkijinokanoseiと一緒につくりたいと思って、さらに岡尾さんの目利きが加わって今回のプロダクトができたことが本当に嬉しいなと思っています。
Hそれで今日の撮影で完成したプロダクトでスタイリングしていただきましたが、改めて、オリジナルで開発した生地はいかがでしょう?
O風合いの良さとクオリティの高さっていうのが写真を通してもわかると思います。椅子に掛けただけでも存在感があって素敵ですよね。かといって主張しすぎるわけでもないし。大胆なチェック柄でも使いやすくって、色の配色もいいですよね。
Hチェック柄のtupplur(トュップルー)はブルーとグレーの色合わせが気に入っています。
Oブルーは寒色だけどグレーと合わせることによって不思議と温かみが出てますよね。この糸自体の凹凸の感じも相まってなのかしら。
Tそうそう!この糸すごく面白いんですけど。
Oあ、オタクが出ますね(笑)。
Hそうですね、今回の製作過程では田中さんが本当に布オタクだってわかりました(笑)。
Tあはは(笑)。ウール100%で質の良い繊維長が長い毛を紡績してるんですけど、それだけだと結構くたっとなっちゃうんです。それで、これは敢えて少しハリ感の出る毛質のものがブレンドされています。
O糸が起毛しているような感じがありますよね。
T紡績の工程で、毛を糸にする前に櫛できれいに梳かす作業があるんですけど、そこを職人技で敢えてラフに仕上げて、糸自体にナチュラルなネップが出るように工夫されています。そうすることで手仕事の表情が出て、温かさがあるのかなと。
Hたしかに、どこかノスタルジックな印象を受けるのも、そういった最近はあまりない手で紡いだような糸を使っているからですね。
O今日の撮影の時にフォトグラファーの枦木さんも、このブルー×グレーの配色が気に入っていましたよ。冬の光にも合っていたし、このどことなく眠い色合わせが冬っぽいですよね。 あ…、今ものすごく眠いです(笑)。
H早朝から撮影した後ですからね(笑)。
Oこのtupplurシリーズは、床がフローリングでも絨毯でも、あと畳の部屋でも合うと思いますよ。ほんとオールマイティに使えちゃう。
H大きさもいろいろ作ったので、ブランケットとしてもベッドスプレッドでも、包まってもいいです。僕は撮影で上から被りましたけど(笑)。
O一番大きいサイズはソファカバーになる大きさがあるんですけど、もう1枚あればブランケットにしてその間に潜って贅沢な時間を過ごすなんていいなって。チェックにチェックを重ねても違和感がなくて、自分としても発見!って感じでした。
Tブロック柄のvit natt(ヴィットナット)、polar natt(ポーラーナット)のシリーズも、それこそオタクの楽しみ方ですけど、縦糸はウールで、って言っても強度のために少しナイロンも入っていますけど。
Oふふふ(笑)。
Tあ…、そこまで細かいことははまあ置いといて…(笑)。
Hはい、それは一旦置いときましょう(笑)。
Tえっと、縦糸はウールで、横糸にはベビーアルパカの部分とキッドモヘアの部分があって。ブロックによって混率が違うから、1枚で違う肌触りが楽しめるっていう面白さがあります。
H違う素材を1枚の布に織るってことは通常はしません。 元々のアイデアは機屋さんに見せてもらった見本の生地で、異なる横糸を2種、試し織りしたものが1枚の布になっていました。で、それを見てこれ面白いねって。
Tそう、狙ってない良さがあって。
H機屋さんは、1枚で見せないで切って渡せばよかったって少し後悔してましたね(笑)。 これだけの巾の広いピッチで異なる混率の糸を織るということは大変なことなので。でも難しいオーダーを実現してくれました。
O素材が違っても洗濯はできるのでしたっけ?
T縮み率が毛によって違うので多少洗濯で形は崩れてきますけど、すでにもう1回洗いをかけているし、多少の縮みがあってもその変化する風合いを楽しんでもらいたいです。実は私はドライマークがついていてもクリーニングに出さないで、家で好みの柔軟剤を入れたりしてざっと洗っちゃうほうが好きです。自己責任で、ですけど。
O家で洗った時に多少縮むことも含めて味わいですよね。
Hこちらもいろいろなサイズがあります。
O大判を広げて使うと、都会的な印象のブロック柄を楽しむことができて、畳んで使うときはどの色が表に出てくるかで雰囲気が変わりますね。少し畳んで椅子に足元から背中まですっぽり被せるとそれだけで見た目にも暖かさが出ておすすめです。
Hマフラーもあるので、その日のコーディネートに合わせて巻き方で出る色を変えて楽しんでもらえればと思います。
スタイリスト。友人とともに小さなデリ〈DAILY by LONG TRACK FOODS〉を鎌倉で営む。著書に『肌触りの良いもの(産業編集センター)』、『おやすみ モーフィ 岡尾美代子の毛布ABC(マガジンハウス)』、『センスのABC(平凡社)』など。
2022年秋にスタートした日本のテキスタイルブランド。設計図と縦糸、横糸が組み合わされ織りなす世界は無限です。生地にまつわる長年の知識と経験、新しいものへ挑戦する熱意と冒険心は、個性豊かな生地を生み出します。生地を作る工程で偶然的に生まれた計算しつくせないデザインも可能性だと私たちは捉えます。これからどんな生地がどんな風に生まれるのか、そしてどのように姿を変えて、どこに旅立っていくのか、これからの可能性にご注目ください。