Color of Mexico vol.1テキスタイルの旅 〜メキシコ買い付け日記〜

太陽の国メキシコでは、約70の先住民(インディオ)が現在も暮らしています。
多くの先住民によって伝統を受け継いだ昔ながらのものづくりを盛んに行われています。
豊かな色彩感覚と自由なクリエイションによるアルテサニア(民芸品)は、多くの人を魅了しています。

そんな数ある優れた手仕事の中から、今回イデーはテキスタイルに注目。
バイヤー大島がメキシコの4つの州を巡って作り手の現場に赴きました。
実際に制作するところを見たり体験したり、話に耳を傾けながら、
暮らしの中で気軽に愉しめる、ラグ、クッション、マルチカバーなどテキスタイル中心に買い付けました。
背景にあるストーリーを知ることで、モノの魅力はもちろん、愛着も増し心も豊かになるでしょう。

大島忠智
大島忠智
イデーのバイヤー。Webマガジン「LIFECYCLING」の企画・編集や、USEN放送の音楽チャンネル「IDÉE Records Channel」の監修も手がける。
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Oaxacaオアハカ

メキシコ随一の先住民文化が色濃く残るオアハカ州。民芸の街としても知られ、村ごとにテキスタイル・陶器・木工など、多くの民芸品が作られています。

オアハカの中心部から25qほど行くと、毛布やタペテと呼ばれるラグなどの羊毛製品の生産で有名な村、テオティトラン・デル・バジェがあります。村には数百の織物工房があり、羊毛を紡いで色を染めるところから織る工程まで、ほとんどをこの村で行っています。

その中でも質の良いタペテを制作している4つの工房を巡りました。各工房では自分たちで糸を紡ぎ、天然の染料で糸を染め、織りを行うという一貫した手仕事を行っています。

工房によって特徴が異なるのも、また興味深いところ。現代のライフスタイルでも使いやすいモダンな色柄の組み合わせをデザインする作り手や、シックな色合いで織りに特徴を出す工房、昔と変わらず伝統的な柄で織り続ける職人。それぞれにこだわりものづくりを行っています。

訪れた工房の一つアイザック・バスケス・ガルシア(Isaac Vasquez Garcia)は、この地域で作られるタペテを世界中に認知させた名工房。一度は途絶えた天然染めを1960年代に復活させアメリカで発表し、タペテの素晴らしさを広めました。その評価は日本でも高く、コレクターが存在するほどです。

黒(アカシアの実)、黄(苔やマリーゴールド)、赤(コチニール)、青(インディゴ)の4つの天然染料を大切にし、昔からの伝統的な色や柄をラグに表現しているのが、この工房の特徴です。

カラフルなサポテックラグは、ちょっとした模様替えやインテリアにアクセントをつけたいときにぴったり。ソファやベッド脇にお気に入りの1枚を敷くのはもちろん、並べて敷いたり重ね敷きで大きなラグのように使ったり、壁にかけて飾ったりとさまざまな愉しみ方ができます。

次は黒陶(バロ・ネグロ)が作られている村、サン・バルトロ・コヨテペックにあるドナ・ローサ(Dona Rosa)工房へ。

黒陶の歴史はモンテ・アルバンの時代(紀元前500年)まで遡ります。かつては今よりも灰色でマットな質感でしたが、1950年代にドナ・ローサという女性職人が、より黒く光沢のある技術を発明しました。現在では村の各工房でこの技術を使っているそうです。釉薬を使わずに黒い土で焼かれた陶器は主に鑑賞用とされ、オアハカの代表的なアルテサニアの一つになっています。

こちらでは愛らしい表情の動物の置物や鳥笛など、ちょっと飾るのに良い陶器を中心に買い付けました。

次に訪れたのはオアハカ州オコトランにあるサント・トマス・ハリエサ村。大島が持っているバッグは、この村で作られたもの。腰織りという、古くからあるメキシコの伝統的な技法で作られています。

実際に織っているところを見せていただきました。織り機を柱につないで腰に巻いたベルトで縦糸を引っ張りながら織っていきます。腰織りで作られた布はとても丈夫で、機械織りにはない手織りならではの独特な風合いがあります。この織物で作ったバッグも買い付けることができました。

オアハカで最後に訪れたのは、なんと刑務所。最近日本でもファッションアイテムのひとつになっているメルカドバッグを買い付けます。

メルカドバッグは服役中の受刑者の自立支援のためにスタートしたものづくり。有害な物質を除いたプラスチックで編まれた色とりどりのバッグは、メキシコでは買い物バッグとして愛用されています。丈夫なのでバッグとしてはもちろん、読みかけの本や雑誌を入れてマガジンラックとしても使えます。

今回のオアハカ滞在では、木彫りや陶器の工房など残念ながら行くことのできなかった村もあるものの、テキスタイルを中心にオアハカの手仕事の良さを感じられるアイテムをたくさん手に入れることができました。

ここで買い付けたアイテムはコレ!

  • サポテック ラグ

  • サポテック ラグ

  • サポテック ラグ

  • サポテック ラグ

Chiapasチアパス

オアハカからメキシコシティへ戻って、飛行機で1時間半。メキシコの南東に位置する、マヤの末裔である先住民族が多く住むチアパス州へやってきました。メキシコの公用語はスペイン語ですが、山間部の村ではスペイン語を話す人は少なく現在もマヤ系の言語を使っています。

ここチアパスでも民芸品としてテキスタイルを生産していますが、地域それぞれに色や柄に特徴がありました。

街の中心から車で2時間、標高約2000mの山間部にあるサン・アンドレアス・ララインサール(San Andreas Larrainzar)という村を訪れました。この村のバヤレモ(BYALEMHO)コミュニティでは、テキスタイルの織りの工程を見せていただきました。コミュニティに属する36名の作り手の中から、21名が集まる大賑わい。

この地域のテキスタイルの特徴のひとつがひし形のような模様。四つの角がそれぞれ方角を表しています。他にもたくさんの柄があり、その一つ一つに意味があります。柄の多くは水・雨・土・生き物など自然がモチーフとなっています。デザインや色の組み合わせは織り手が自由に考えていますが、デザイン画があるわけではなく、考えながら織っていきます。1人15パターンほどの図柄がすでに頭に入っているのだそう。

作り手の女性たちは家事の合間に1日4時間ほどテキスタイルの仕事を行っているそうです。実際に庭先で織っている人をたくさん見かけました。

色数や柄の細かさにもよりますが、クッション1枚で通常15日から20日、細かい柄は45日もの製作日数がかかるそうです。ずいぶん手間暇がかかっているんですね。

彼女たちが着ている民族衣装も自分たちで手織りしたテキスタイルで作ったもの。手織りしたスカートに細かい模様の入ったブラウス、腰には帯を巻くスタイルです。伝統的な衣装ですが、色や柄合わせを現代風にアレンジして着ているそうですよ。

ララインサールでは、伝統的な色柄のものからインテリアに取り入れやすい色合いのものまで幅広く買い付けました。この地域の図柄や色使いは私たちの好みなのかも?というくらい気に入ったものがたくさんありました。

次は先住民のツォツィル族が暮らすチャムラという村へやってきました。彼らは伝統的な技法で羊の織物を作って暮らしています。

村の代表のお宅の庭で作業をするというので伺うと、たくさんの羊がいました。羊を育てるところから自分たちで行っているそうです。こちらではブランケットを作る工程を見せてもらいました。

まずは羊の毛をはさみでざくざくと刈り、刈った毛をきれいに洗って乾かした後、毛を整えるために梳いていきます。その後は糸を紡ぐ作業。手で紡ぐことで、ふっくらと糸に味のある風合いが生まれます。

糸ができたらいよいよ織りの作業。まずは強度を出すためにトウモロコシで作った液に浸したタテ糸を張り、乾いたらヨコ糸を入れて織っていきます。ブランケットは大きいので、織る作業も全身を使う重労働。羊1頭から毛糸玉が3つできますが、ブランケット1枚織るのに4~6玉の毛糸を使うそうです。

大島も刈った羊毛を梳く作業に参加させてもらいました。彼女たちの手付きを見ていると簡単そうにみえましたが、思ったよりも力が必要でなかなかうまくできません。この一連の作業を女性だけで行っているのは本当に驚きです。

こちらが出来上がったブランケット。染色はせずに、羊毛の自然な色そのままを活かしています。手仕事だからこその自然な風合いと温かみがあり、使うごとに馴染む良さがあります。

ここで買い付けたアイテムはコレ!

  • クッションカバー

  • クッションカバー

  • ポーチ

  • ポーチ

次はオトミ刺繍で有名な、オトミ族を訪ねてイダルゴ州へ。

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