新しいものだけ、時代の先頭を切り拓くものだけを創りたい。と思い、若い頃からデザイナーと知恵を合わせて、マーケットとも社員ともなんとか折り合いをつけながらやってきた。先頭を切る喜び、前衛である姿勢が企業としてのメッセージとなった。
その反動か、今度は、もっと長くつきあえるもの、変わらずに愛され続けられるもの、普遍的なデザインを作って行こうと考える。いつも新しいものなんて本当に有るのだろうかと思うと興味は古いものに向かう。パリの蚤の市やロンドンのポートベローには今でも産業革命のころの道具や工芸がある。人には終焉の時があるが、良いデザインはいつまでも生き続け、価値を増し続ける。そして毎日でも新しく思えるものがある。
このセルジュ・ムーユのランプは1980年代に僕がパリのクリニアンクールの蚤の市でゴミのように積んであった照明器具の中から見つけた。瞬間、これって新しい、と思った。骨董屋のおじさんは1950年代のデザインの教授でありアーティストでもあるセルジュを良く知っていた。そこでパリの応用美術学校を訪れ、彼にはじめて会った。50年代当時、Galerie Steph Simon というところではイサム・ノグチやシャルロット・ペリアン等とともにこのセルジュ・ムーユのランプも展示会をされていたそうだ。初対面で彼と意気投合した。パリ郊外の Chateau Tierry という村にある彼の家に招待してくれたので、ちょうどその時パリにいた若きマーク・ニューソンをつれて行くことにした。サンジェルマンの花屋でプレゼントの花を選ぶとき、その頃季節だった大きな鶏頭(ケイトウ)を有るだけ買った。セルジュは自動車や乗り物にも興味が有り、素材そのもののセンシュアルな感触を好んだ。ケイトウの花を触り愛でている様は今も忘れられない。
その後僕も日本に招待し、彼は図面を持ってやってきた。そうして当時、僕が経営していた IDEE からこのランプを発売した。一度マーケットからはずれたものも、こうして再び新しく発見され、また生まれかわることもあるのだ。IDEE の理念の中で大切にしてきたものの1つにこの普遍的な新しさと言うものがある。いつまでも生き続ける新しさ、セルジュ・ムーユのランプの再生はむしろフランスで評価されている。 |