WOODWORK from Hokkaido 木工の町、北海道旭川市

イデーのキャビネットやダイニングテーブルなど木製品の多くは、北海道旭川で生産されています。1990年代、オリジナル木製チェスト「ウェーブチェスト」の改良に取り組んでいたイデーは、北海道産の美しいイタヤカエデ材を使った旭川のシンプルかつ上質な家具づくりに出会いました。全体の第一印象だけではなく、細かい合わせ目や背面の仕上げ、使用する金具にもこだわりをもつイデーのデザインと、日本の職人ならではの木工への想いと高い技術とが、ときにぶつかり合い切磋琢磨し合うことで、ロングセラーアイテムを世に送り出してきました。

さりげないなかにも個性を感じさせ、細部に至るまで美しく、「いつまでも見飽きない」イデーの木製家具。今回、製材所から家具の工場までが集まる旭川を訪ね、イデーのキャビネットやテーブルが生まれる場所とその営みを映像に収めました。ぜひご覧ください。

  • Cabinet / Shelf キャビネット / シェルフ
  • Table / Desk テーブル / デスク
  • Craftmanship ものづくりの現場

Craftmanship ものづくりの現場

北海道のほぼ真ん中に位置する旭川。今は動物園で有名な一大観光地となっていますが、古くは北海道の鉄道交通の要所として発展しました。道産のイタヤカエデなど家具に適した良質な木材が豊富に手に入ったことや、地元自治体が学校をつくって積極的に技術者の育成に取り組んだことから、戦後、日本を代表する木工家具の名産地として全国にその名をとどろかせました。これまで「技能オリンピック」という世界的なコンテストに何人もの出場者を送り込んでいる名実ともに日本トップクラスの「木工」、「家具」の町です。

イデーと旭川との出会いは1990年代初頭にさかのぼります。1982年から本格的にオリジナルデザインの家具販売をスタートしたイデーが最初の小さなショールームを東京・南青山の骨董通り沿いに開いていた頃でした。まず経営チームが旭川の工場を訪れ、その木工家具づくりの技術…と、おそらくは大自然に囲まれた土地の雰囲気も…に魅了されたのが始まりです。当時改良していたウェーブ トール チェストを地元・北海道産のイタヤカエデでつくった試作は、デザイナーをはじめとする東京の家具開発チームを唸らせる仕上がりでした。

旭川には車で30分ほどの範囲に、製材所から突板工場、家具の工房まで、全ての工程を担当する大小さまざまな会社が集まる点も、家具産地としての強みとなっています。家具の工房は、自分たちが形にしたい製品にあわせて、無垢板の製材所や突板工場に細かいオーダーを伝えることができるのです。電話や文面では伝わりづらいことも、一緒に材を見ながら話しあえる距離感と信頼関係が、旭川の一見素朴なようで実は細かいところまで神経の行き届いた繊細なものづくりを支えています。

今もイデーのキャビネット / シェルフ商品のほぼ全てが旭川で生産されています。伐採制限で現在は入手困難となってしまった道産イタヤカエデの無垢材は、定番商品では使用していないものの、ロングセラーのウェーブ チェストでは、木目の美しいその突板を使用して(抽斗の前板は北米産ハードメープル無垢材を使用)製作しています。

旭川の木工のもうひとつの特徴は、機械を使いつつもあくまで職人の高度な技が生きている点です。イデーの提携工場でも、自動車の組み立てのようなオートメーションのラインではなく、あくまで一工程ずつ、担当する職人がその日の気温・湿度、木材の状態をみながら丁寧に手を加えていく、いわば昔気質のものづくりが行われています。

機能に配慮しつつもそれだけではない、眺める人の心を浮き立たせるデザインが、イデーの創業以来の信条でもあります。その独自の造形を支える旭川の木工技術。これからも二人三脚で、熟練の技だけが実現できる唯一無二の家具づくりを、未来につないでいきます。